一期一会 手束仁

第1回 夢と期待の膨らむ都立日野2009年12月12日

 この夏、西東京大会ではベスト4に都立校が2校残って話題となった。
一つは小平、そしてもう1校が日野だった。いずれも決勝進出を目前に敗退したが、日野は甲子園出場を果たした日大三と大接戦を演じ、6回まではリードを保つなど大いに健闘して評価を上げた。さらに日野は、新チームとなった秋季東京都大会でもベスト4に進出した。都立校と私学とを区別しているわけではないが、東京都など首都圏では選手獲得や施設といった面も含めた練習環境に恵まれている私学の有力校に比べて、都立校は何かと規制も多くハンデがあるという事実は否めない。

 そんな中で、夏、秋と違うチームで連続して4強に進出したのはやはり評価されていいだろう。

 日野は今回、東京都高野連から21世紀枠代表候補として推薦された。これは、2002年に続いて二度目のことである。そのときのチームからは翌年秋に横川雄介捕手が読売の8巡目でドラフト指名されて話題にもなった。

 公立校の場合、教員の異動は避けられないことではあるが、日野の場合は前任の佐藤賢司監督(現国立監督)から引き継いだ嶋田雅之監督が、「本気で甲子園出場を目指すには打撃力のあるチームでなくてはいけない」という信念で、打撃型のチームを目指してチームを作り上げている。この秋はその成果が徐々に実ってきたといってもいい。

都大会準々決勝の明大中野八王子戦では、五番菊地理浩君が逆転サヨナラ満塁本塁打を放って、劇的な勝利を飾っている。この試合では四番の豊田陵平君も6回に左中間へ反撃の本塁打を放っている。大事な場面、ここ一番で打てる選手が確実に育っているというのは、嶋田監督の目指す打撃型のチームになっていっているといえそうだ。

 とはいえ、高いレベルで戦うには投手を中心とした守りの安定は欠かせない。
その軸となるのは松本勝哉君で、164cmと小柄だが、コントロールよく小気味のいい投球をする。田村勇祐君とともに、秋季大会でも粘りの投球で4強進出の原動力となっている。
1、2年生だけでも64人の部員がおり、シートノックでは捕手だけでも8人がレガースをつけて守っているなど、層も厚い。
「夏の実績は来年度の入部者に大いに影響を与える」(加藤陽一部長)というだけに、来春にはさらに多くの生徒が野球部の門を叩くことであろう。

 公立校でもあり、当然のことながら例え初心者であったとしても「来るものは拒まず」という姿勢を貫いている。野球部にとって、理想の部員数が何人なのかということは、チームの方針によっても異なるであろうが、日野の場合、東京都でも屈指の大所帯になることだけは間違いない。

 グラウンドは校舎に隣接しているが、両翼は80mもとれないくらいだし、左中間の膨らみもあまりなく、右中間には校舎がせり出している変形となっている。それでも、練習試合があると熱心な父母や近所の人が多く観戦に訪れる。ネット裏にはじっくりと観戦出来るようにスタンドが設けられており、日差しよけの屋根まであるのはありがたい。こうした配慮も「地域に根ざした高校野球」としては必要なことだと思う。また、女子マネージャーが選手名をアナウンスして紹介もしている。こうした取り組みも含めて、21世紀枠の推薦理由となったのであろうと思う。

 もっとも、二度目の推薦をされたからといって代表になれるというものではない。愛知の成章のように3年連続して推薦されて、やっと代表に選ばれたという例もある。しかし、日野はたとえ来春の選には漏れたとしても、ここまで積み上げてきた実績は確かなものとなってきている。そして、選手たちも確実に、「私学の強豪にも臆さずに戦える」という自信は芽生えている。嶋田監督は、選手たちには浮ついた気持ちではなくしっかりと地に足をつけた気持ちで練習していく姿勢を求めている。そんなチームだけに、一冬越えてどこまで成長していくのか、楽しみである。

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